こんな経験はありませんか。
何度言っても部下が動かない。
部下のミスを見ると、つい腹が立つ。
上司は現場を分かっていないと思う。
自分ばかり仕事を抱えている気がする。
家に帰っても、仕事のことが頭から離れない。
私は高卒で飛び込み営業からキャリアを始めました。
そこから情シスに転職して、25年。
1000人規模の会社で、管理職も経験しています。
営業時代も、情シス時代も、ずっと本気で思っていました。
「悪いのは相手だ」
部下が悪い。
上司が悪い。
他部署が悪い。
ところがある本を読んだとき、こう思いました。
「もしかして、問題を大きくしていたのは自分かもしれない」
今日はその話をします。

第1章 なぜ頑張っている人ほど苦しくなるのか
月曜日の朝。
部下から提出された資料を見る。
また修正が必要だった。
また同じ説明をする。
また同じミスを見つける。
気づけば、心の中でこう思っている。
「なんでこんなこともできないんだ」
この瞬間から、人は相手を「問題」として見るようになります。
本書ではこれを「箱に入る」と表現しています。
箱に入るというのは、相手を一人の人間として見るのをやめて、自分の都合に合わない存在として見てしまうことです。
私も営業1年目、よくこの箱に入っていました。
契約が取れない日。
上司に詰められて、帰り道で思っていました。
「お客さんが分かってないだけだ」
「上司は現場のことを知らない」
今思えば、これが最初の箱でした。
頑張っている人ほど、この箱に入りやすいです。
理由は単純で、頑張っているからこそ、うまくいかない時に「自分のせいじゃない」と思いたくなるからです。
第2章 「箱」とは何か
難しい話ではありません。
具体例で説明します。
部下から相談された。
本当は話を聞くべきだと思った。
でも忙しい。
「後にして」
そう言った。
その瞬間、少し罪悪感がある。
人はこの罪悪感を消すために、自分を正当化し始めます。
「部下の相談は大したことない」
「あいつは甘えている」
「自分の方が忙しいんだから仕方ない」
こうして、相手を悪者にしてしまいます。
これが箱です。
ポイントは、最初に悪いことをしたのは自分だということです。
「後にして」と言った瞬間、すでに小さな罪悪感がありました。
でもその罪悪感と向き合うより、相手を悪者にする方が楽です。
だから人は箱に入ります。
私も情シス時代、よくこれをやっていました。
現場から問い合わせが来る。
「今忙しいんだけど」
そう思いながら対応する。
雑な対応をしてしまう。
相手の反応が悪い。
「あの人はいつも文句ばっかりだ」
そう思って終わる。
でも本当は、最初に雑な対応をしたのは自分でした。
第3章 部下が育たない本当の理由
管理職研修では、たいてい次のことを教わります。
指導方法。
面談のやり方。
コーチングの技術。
しかしこの本が問いかけるのは、それより前のことです。
「あなたは部下をどう見ていますか」
部下を人として見るのか。
部下を問題として見るのか。
これだけで、結果は大きく変わります。
私が管理職になりたての頃、部下のAさんがいました。
仕事の覚えが遅くて、何度も同じことを聞いてくる人でした。
最初の頃は丁寧に教えていました。
でも3回目、4回目になると、こう思うようになりました。
「またか」
「メモすればいいのに」
「やる気がないんじゃないか」
この時点で、私はAさんを「問題」として見ていました。
教え方も雑になっていきました。
「前にも言いましたよね」
そんな言い方をするようになっていました。
Aさんはどんどん質問しなくなりました。
代わりに、間違ったまま仕事を進めるようになりました。
ミスが増えました。
私はさらにイライラしました。
これは完全に悪循環です。
そして気づきました。
Aさんが育たなかったのは、Aさんの能力の問題ではありませんでした。
私がAさんを「問題」として見た瞬間から、この悪循環は始まっていました。
第4章 上司との関係にも同じことが起きている
ここまでは部下との関係の話でした。
実は、上司との関係でも同じことが起きます。
「上司は現場を分かっていない」
そう思った瞬間。
上司の発言が全部、嫌に聞こえるようになります。
会議で何を言われても、
「また分かってないこと言ってる」
そう感じるようになります。
でも逆に考えてみます。
上司にも上司の事情があるかもしれません。
経営層からのプレッシャー。
他部署との調整。
自分には見えていない情報。
その視点を持つだけで、衝突は減ります。
私も40代になって、ようやくこれが分かるようになりました。
20代、30代の頃は、上司の指示に納得できないことがあると、
「現場を知らないくせに」
そう思っていました。
でも自分が管理職になって、経営会議に出るようになって分かりました。
現場には見えない数字や事情が、上にはたくさんあります。
上司も、自分なりの箱の中で苦しんでいたのかもしれません。
第5章 私が失敗した話、2つ
ここからは、私自身の失敗談です。
きれいな話ではありません。
恥ずかしい話です。
でも、ここが一番伝えたい部分です。
営業時代の失敗
入社2年目の頃です。
新人の後輩がついて、私が指導係になりました。
後輩は商談が苦手で、よく契約を逃していました。
私は同行するたびに、商談後にこう言っていました。
「なんであそこでもっと押さなかったの」
「お客さんが迷ってる時こそ、決断させなきゃダメだろ」
後輩は「すみません」と言うだけでした。
半年後、後輩は会社を辞めました。
辞める前日、飲みに誘いました。
その時、初めて聞きました。
「先輩と同行する商談が、一番怖かったです」
「うまくいかないと、後で何を言われるか分からなくて」
「だから余計に、お客さんの前で固くなってました」
私は何も言えませんでした。
私は後輩を「契約が取れない問題のある新人」として見ていました。
でも後輩からすれば、私自身が「商談を怖くしている原因」でした。
情シス管理職時代の失敗
それから20年以上経った頃です。
部下のBさんが、システム障害の報告を遅らせたことがありました。
障害発生から報告まで、3時間かかっていました。
私は強く注意しました。
「なんでもっと早く報告しないんだ」
「初動が遅れたら被害が広がるだろう」
Bさんは「すみません」と頭を下げました。
その後も、似たようなことが何度かありました。
ある日、別の部下から聞きました。
「Bさん、課長に怒られるのが怖くて、報告のタイミングを見計らってるみたいです」
「先に自分で何とかできないか試してから、報告しようとしてるんです」
私は愕然としました。
問題は、Bさんが報告しない人だったことではありませんでした。
問題は、私が「報告したくなくなる上司」になっていたことでした。
営業時代の後輩も、情シス時代のBさんも、同じ構造でした。
私が相手を「できない人」として見た瞬間から、相手は私の前でどんどん萎縮していきました。
そして萎縮した結果のミスを見て、私はさらに「やっぱりできない人だ」と確信を深めていました。
これが、箱の恐ろしいところです。
自分が箱に入っていることに、自分では気づけません。

第6章 この本を読んで、翌日から変えたこと
実践編です。
難しいことはしていません。
①まず相手の事情を考える
怒る前に、一度止まります。
「何があったんだろう」
そう考えてから、口を開くようにしました。
例えば、報告が遅れた時。
すぐに「なんで遅れたんだ」と言うのではなく、
「報告が遅れた理由を聞いてもいい?」
そう聞くようにしました。
これだけで、相手の答え方が変わりました。
②相手をラベルで見ない
「若手だから」
「ベテランだから」
「営業出身だから」
こういう色眼鏡をやめました。
ラベルで見ると、その人個人を見なくなります。
Aさんも、Bさんも、後輩も、ラベルで見ていたら、ずっと「問題のある人」のままでした。
③正しいかより関係を優先する
これが一番難しかったです。
自分が正しいことを言っていても、相手との関係が壊れたら、結果的に負けです。
正論で部下を追い詰めても、その部下は二度と本音を話してくれません。
「正しさ」より「この人とこれからもやっていけるか」を優先するようにしました。
第7章 この本をおすすめしたい人
ひとつでも当てはまるなら、読む価値があります。
部下育成で悩んでいる。
チームがまとまらない。
会議でイライラすることが多い。
家庭でも人間関係に疲れている。
「自分は悪くない」と思うことが多い。
正直に言うと、最後の項目に当てはまる人ほど、この本は効きます。
私自身がそうでした。
まとめ この本を読むと見えてくること
読む前は、こう思っていました
部下が悪い。
上司が悪い。
他部署が悪い。
読んだ後は、こう見えてきます
自分は相手をどう見ているか。
なぜ衝突が起きるのか。
なぜ人が離れていくのか。
部下を変える方法を探している人は多いです。
でもこの本が教えてくれるのは、それとは違う話です。
「相手を変える前に、自分の見方を変える」
という話です。
40代の管理職になると、仕事のスキルは十分持っています。
それでも人間関係で苦しむ人は、少なくありません。
私もその一人でした。
営業時代の後輩を辞めさせてしまったこと。
情シス時代のBさんを萎縮させてしまったこと。
どちらも、能力の問題ではありませんでした。
私が相手をどう見ていたか、それだけの問題でした。
だからこそ、この本は単なる自己啓発本ではなく、現場で使える教科書だと思っています。

